Takashi Nagai
業務指示をする側も受ける側も最低限押さえておきたいこと
今回は、業務指示に関して最低限押さえておきたいことをお話ししたいと思います。指示をする側も受ける側も、これが押さえられていれば、実行内容が正しく伝わらなくて間違って実行するとか、実行内容について問い合わせを受けるということがなくなります。
それは、BOSCAR(ボスカー)というフレームワークです。
BOSCARは結構昔からあるフレームワークなので、あなたはもうご存知かもしれません。私は新人の頃先輩から叩き込まれました。
BOSCARは、私が今まで出会ったフレームワークの中で最強だと思っています。
私は新しい仕事を始めるときは必ず使っていて、期待通りの成果を上げています。このおかげで、私はPMとしても優秀になりました。(と自分で思っているだけですが^^;)
BOSCARをすでに使いこなしている方は、これ以上読む必要はないかもしれません。 でも、私なりの解釈と使いかたをご説明しますので、参考になるところもあるかもしれません。 数分で読み終わりますので、最後まで読んでみてください。
BOSCARを知らない、もしくは聞いたことがあるという方は、是非このブログを読んで、使いかたを習得してください。そしてどんどん実戦で使ってください。
BOSCARとは?
BOSCARは、1980年代にジェミニというコンサルティング会社が提唱したものらしいです。中世のヴェネツィア商人が契約を締結するときに用いていたという話もあります。本当かどうかは知りません。
まとまった仕事を始めるときに、BOSCARを使って仕事の内容を整理すると、仕事を出す方も受ける方も認識の違い(齟齬)がなくなります。
業務指示も同様で、指示を出す側と受ける側が同じ土俵で話ができるので、指示が正しく伝わります。
BOSCARは文章にして相互が確認しなければなりません。口頭ではだめです、書いてください。
BOSCARは、それぞれ以下の単語の頭文字です。
B:(Backgroud)背景 O:(Objective)目的 S:(Scope)範囲 C:(Constraint)制約 A:(Assumption)前提 R:(Result/Report)成果
以下、業務指示に特化して具体的にお話しします。
Background(背景)
業務指示を受ける側は、その指示がどういう理由で出されたのかを知る必要があります。昔は、ただ「やれ」と上司が言えば、何も言わずに従う部下がいましたが、今の時代の部下は納得しないと従いません。
「昔は良かった」と嘆く人がいますが、私は良いことだと思います。業務指示が出た背景を正しく知ることによって、同じ指示でも実行の内容が変わってきます。背景に共感できれば思い入れも違ってきます。
指示を受ける側から、もっとこうした方が良いのではないかという意見も出てきて、指示自体の質の向上も見込めます。
指示をする側も、背景を記述することによって、自分が出す指示がどのような経緯で出されたのか明確になります。「毎年この時期にキャンペーンをやっているから、実施の指示を出す。」ではくて、「なぜキャンペーンをやるのか?」「なぜこの時期なのか?」というところまで突っ込んで書くことによって、指示の意味がより明確になります。
背景をよくよく考えると、実は不要な指示だとわかって、工数の削減に繋がるかもしれませんね。
Objective(目的)
業務指示の目的を明記します。書くことによって目的を明確にします。私はこれを「ステートメント化」と言っていますが、ステートメント化することによって、より目的が明確になります。場合によっては目的に潜む矛盾が表に出てきたりします。
なんでも口頭で指示を出す人がいますが、それはいけません。よほど自分のことを理解してくれる腹心がいれば別ですが、他人は自分の考えを10%もわかってくれません。他人に自分の考えを伝えたければ、文章にしましょう。
「そんな暇はない」と思うかもしれませんが、その暇を惜しむと指示後の問い合わせ対応や軌道修正などで結果的により多くの時間がかかってしまいます。
Scope(範囲)
業務指示の範囲を明確にして、やらなくて良いことをやらないようにします。やるべきことを明確にするのが「範囲」の主目的ですが、やらないことを明確にするのも目的の一つです。
このスコープはとても重要です。日本人は特にスコープを曖昧にします。はっきりとモノを言わない民族なので、なあなあで済ませてしまいます。でも、ここを明確にしておかないと、後々問題になります。当初予定していなかった作業が増えたり、当然やってもらえるはずと思っていたことがやってもらえなかったりします。
早い段階でスコープのズレに気づけば良いのですが、そういったものは往々にして手遅れになってからわかるものです。
なのであらかじめ、スコープを書き出して、お互いに合意をとっておくことが必要なのです。
Constraint(制約)
仕事には必ず制約条件があります。キャンペーンを大々的にやるので大量に商品を仕入れたいと言っても、数に限りがありますよね。キャンペーン期間も制約になります。かけるコストにも上限があります。
数々の制限の中で最大の効果を出すのが、実施者の腕の見せ所ではないでしょうか?
そのためには、どこにどの様な制約があるのかをきちんと見極める必要があります。
Assumption(前提)
自分がその仕事を行うときに、自分以外の誰かによって、もしくはその仕事に手をつける前の自分によって、あらかじめ準備されているものが前提条件です。
前提条件が満たされないと、その仕事はそれ以上先に進めません。
新製品販売キャンペーンの指示では、その新製品がキャペーンの前の日まで届いている必要があります。
制約と前提を混同してしまいがちになりますが、制約は、自分がやるにあたって障害となるもの、前提は、それがないとそれ以上先に進めないものです。
Result/Report(成果)
仕事にはかならず結果があります。仕事の結果を成果と言います。それがモノになると「成果物」と言います。
契約を伴う仕事だと、成果物(Result)に対して対価を支払います。
業務指示だと報告(Report)ですね。実施するためにかかった時間も報告すると、指示者は次の指示の見積もりに活かせます。
この成果を、仕事を与えるときに明確に定義しておくと、仕事がスムーズに進みます。仕事を与える人がなにを求めていて、仕事を受ける人が何を与えようとしているかが明確になることで、お互いの認識が一致して、気持ちよく仕事ができます。
BOSCARはどうして有効なのか?
仕事は、求める人がいて、与える人がいます。求める人が与えられたものに満足すれば、対価を支払ってくれます。
会社員も同じです。上司や本部からの指示に的確に応えて対応することによって、組織がスムーズに回り、会社全体として売り上げが上がるので、あなたに給料(対価)が支払われるのです。
あなたが的確に仕事をするために、
あなたが的確な指示を出すために、
BOSCARがもっとも有効です。
使う場面は?
ここまで読んだあなたは、「BOSCARってよさそうだけど、どんな場面で使えば良いかな?」と思ってませんか?
BOSCARはちょっとした指示から、大きなプロジェクトまで使えます。
あなたがこれから出そうとしている指示、もしくはあなたがさっき受け取った指示について、BOSCARを考えてみてください。いままで惰性的に出していた作業が意味を持ってくると思います。
私の経験
私は新人の時に上司からBOSCARを教わり、それ以来ずっと使ってきました。仕事を与えられたり与えたりしたときに、BOSCARを書いて相手と確認しました。
お客様向けの提案書を書くときもBOSCARを書きました。
パートナーに仕事を依頼するときもBOSCARで依頼しました。
社内向けの企画書でもBOSCARを書きました。
BOSCAR自体を相手に見せなくても、BOSCARを書くことで自分の頭の中が整理されました。
ここまでは、自分でBOSCARを書いた話ですが、
自分が上司になったときは、部下に新しい仕事を与えるたびにBOSCARを書かせました。部下が書いたBOSCARを見て、部下が新しい仕事をどれだけ理解しているかを測っていました。その後、部下と話しながらBOSCARを修正することによって、部下の仕事に対する理解が深まりました。
BOSCARを相手に書いてもらうのは良い方法です。特に部下には書いてもらいましょう。部下の育成にも役立ちます。
業務指示とBOSCAR
さすがにWOMSでBOSCARはできません。でも、いずれ機能拡張でBOSCAR対応しようと思っています。
しかし、WOMSは指示に添付機能があるので、業務指示に合わせてBOSCARを書いて、業務指示と一緒に添付で送ることができます。
しかもWOMSは業務指示に対する報告機能がしっかりしているので、BOSCARの最後のReportができます。写真を添付したり、作業実績時間を入力したりすることで簡単にできます。成果物を添付して送り返すこともできます。
ぜひ、WOMSを使った業務指示でBOSCARを活用して、間違いのない業務指示を実現させましょう!